儚きことは美しきかな

永遠に続くものではなく、いつかこわれてしまうものこそが美しいーという考えに基づくならば、親にとって、子どもの成長していく姿ほど美しいものは無いかもしれない。どれほど願っても、1分1秒たりとてその姿をそのままに留めておくことは叶わず、子供たちは休むことなく成長し続ける。子どもが元気に成長することは、とても嬉しいこと。でも同時に、その一瞬一瞬は、なんと儚いんだろう。子どもの親になった人というのは、みんなこんな気持ちを心に抱えて生きてるんだろうか。私には子どもはいないのだけれど、そんな切なさをふと共有することになった、2013年の秋のできごと。


親友の娘ちゃん、御歳6才。生まれた時から(いや、お腹にいた時から?)なんだかずっと仲良くしてきた彼女の、ピアノの発表会。かわいい花束を用意して、会場へ向かう。曲目は「さんぽ(となりのトトロ)」と、ママ(=スパルタピアノ教師)との連弾で「A Whole New World」。弾きっぷりは心配ない。本番を迎える一週間前に、既に家のピアノで聴かせてもらった。この時の私の衝撃が、なんというか・・・大変なものだった。半年ぶりくらいに聴く娘ちゃんのピアノに、「え?!?!」と耳を疑う。たった半年前は何とも辿々しく、左右を合わせて弾くのにせいいっぱいだったはず。左手も、ただ鍵盤を押さえるだけくらいのレベルだったはず。なのに、今は左手がちゃんと「さんぽ」を伴奏している。私自身ピアノを弾くし、左手右手の構成も分かるから、彼女がどれだけの練習量をこなしてそのレベルに到達しているのかは容易に想像がつく。「がんばったね・・・」うっかり涙がこぼれそうになるくらいの感動だ。続いて、ママ(スパルタピアノ教師)との連弾で聴かせてくれた「A Whole New World」にも、正直、びっくり。シ、シンコペーション・・・(←拍を取る位置がね、通常と異なるんです)いつのまにそんなオトナなリズムを身につけたの?!子どもは吸収が速いから、確かにカラダで覚えてしまうことはあるだろうけど、連弾で、6歳で、きちんと呼吸を合わせてシンコペーションを取るのは、確実な練習量&ある程度の音楽センスが無いと無理だと思う。この半年の成長ぶりに、私はただただ目を丸くするばかりだった。


そんなこんなで、ちゃんと弾けるのはわかっていても、本番はこっちが不要に緊張する始末^ ^; そんなことも知らずに、娘ちゃんはしっかりと弾いていた。客席から2人の背中を見ながら、「2年後、次の発表会の時は、もうママとじゃなくてお友達と連弾するのかなぁ・・・」なんて、ふと考えた。だとしたら、この景色はなんてキラキラとして儚いんだろう。もう少しだけ今のままでいて・・と思っても、待ってくれない。そして「A Whole New World」のハーモニーは美しすぎて、また少し涙が出そうになる。子どもの成長とはきっと、虹のように、夕焼けのように、瞬きのごとく短いきらめきの繰り返しなんだろう。