日傘の女

日傘がなければ、生きてゆくことさえできない儚いわたくし…(まだ源氏物語をひきずっている)。日傘を利用するようになってかれこれ10年…以上?3月から10月くらいまで、雨が降っていなければ基本的に毎日使います。そういう意味ではたしかに消耗が激しいものとは思いますが、本日、早くも4本目の日傘を購入しました…。
ものは大事に使う方だし、物持ちもかなりいい方(携帯電話以外は)だと思うので、10年で4本というのはかなりの消耗量。しかし、飽きて捨てた傘などひとつもございません。いま、それぞれの傘との思い出を、ひとつひとつ辿るわたくしなのでございます…

最初の日傘とはドラマのような別れを余儀なくされたのでございました。Private Label のシンプルなデザインで、使い勝手もよく、このまま連理の枝のごとく連れそうものと思っておりました。あれは2007年、イスタンブールのバザールでの出来事・・・物見をしたのちに気づくと、かの傘が無いのでございます。置き忘れた場所は見当がついておりました。わたくしは、ものを置き忘れることがかなり頻繁にあるのでございますが、置き忘れた場所を覚えておるため(ちょっとしたコツがあるのです)、だいたいが手元に戻ってまいります。しかしイスタンブールの雑踏の中、かの傘は、永遠に失われてしまったのでございました。バザールでなくしたパスポートを無事に見つけていたSATCのキャリーのようには、うまくゆかないものでございます。今ごろどこを彷徨っておるのかと思うと、胸の締め付けられる様な思いがいたします。しかし、遠国トルコのどこかの街でどなたかの上に降り注ぐ陽射しを和らげておるやもと想像すれば、わたくしの心も救われるような心地がいたします。しかしトルコで日傘を使う女など見たことが無いがな!

時は移ろい、二本目に手にいたしましたのはピンキーとキラーズではなく、ピンキー&ダイアン。少々派手と申しますか、軽率な感じのする飾り物などもついてはおりましたが、それもまた一興、と長らく側に置いておりました。しかし、このピンキーには、目を覆いたくなるほどの悲劇が待っていたのでございます。あれは2010年、某社の蹴鞠大会の折。たしか我が国の最高学府で蹴鞠組の大将など務めていらっしゃった やんごとなき殿方の、お蹴りになったその鞠が、ただただ一直線にわたくしの顔をめがけて飛んでまいったのでございます。ああ…なんと…なんと恐ろしいこと。わたくしはどうすることもできず、鞠に日傘を向けてしまったのでした。ピンキーはあえなく砕け散り、そのままはかなくなってしまったのでした。「あんた私の5倍は稼いでんだから、傘弁償してよ!!!」などとはもちろん申し上げません。何もかも、わたくしのせいなのですから…!飛んでくる鞠に傘を向ければ、壊れるも道理。わたくしの運動神経の無さが招いた禍だったのでございます。

失意のうちに、わたくしは三本目の日傘を迎えることとなりました。このMICHEL KLEINはなかなか器量の良い傘ではございましたが、ただ少し…なよなよとしたところがあり、流されやすいと申しましょうか、こちらを不安にさせるようなところのある傘でございました。風の強い大路など歩きますと、自ら閉じてしまったりするのでございます。何ともたよりなく思っておりましたが、最期はわたくしの至らなさが原因で…またしても…
昼餉のとき、椅子と尻の間にMICHEL KLEINを置いてしまったのです。そこへ不用意な力が加わり… まこと、もののけの仕業としか思えませぬが、店を出た時にはすでに苦しそうに折れ曲がっておりました。急ぎ加持祈祷などさせましたが、すでに虫の息。わたくしが手で触れましたら、柄が真っ二つに折れてしまったのでございます…。
傘の部分は傷もなく、まだ命あるように美しいまま。しかし、こう柄が短くては、カエルの傘にしかなりませぬ。口惜しくも、やはり手放すこととなったのでございます。

そして今日、ここへやってきた新しい女御…ではなく日傘が、ラルフローレンなのでございます。最近の日傘というのはみなこのようなものなのでしょうか?遮光率99.9%などと申しまして、まことゴワゴワと不可思議な手触りにございます。それでもわたくしには、このラルフローレンにすがって生きてゆく他に道はないのでございますから…
あれっおかしいな、また紫式部が…


みなさん、日傘は何年くらい使うものなのかしら?わたくし、今度は10年使ってみせますわ!