デモ行進、そしてシュプレヒコールの嵐

私は、子どもの頃から割と我慢強い方だったと思う。注射だって、血管が見つからなくて何度も何度も刺されて、最後に手の甲に刺された時しか泣いた記憶はない。大人になってからだって、乳がん検診のマンモグラフィでは泣かなかった(あたりまえか)。いや、あれは実際涙が出るほど痛かったけど。
だから、病院でされる「痛いこと」対して、ちょっとやそっとでわぁわぁ言う方ではないのだ。とにかく。

本日、年に一度の健康診断は、去年と全く同じようにスタート。血圧、上が95。「いつもこんなに低血圧?気持ち悪くないですか?」と聞かれるのも、いつもと同じ。採血は、血管がスグ見つからないのと、普通の人みたいに「しゅぱーっ」と出ないので、2倍以上の時間がかかる、これもいつもと同じ。フルーツモーニングが効いてるのか、体脂肪や代謝がよくなったことは褒められる。これは嬉しい。続いて、「脈拍が普通の人より少ないですけど、水泳とか陸上やられてます?」と尋ねられる。この私がやってるわけがない!笑えるぅ〜水泳と陸上って。昔の英文法教科書で言うと「I am the last person to swim.」だっつぅの。でも多少は呼吸が深くなっているのかもしれない。素直に嬉しい。こうしてとんとんと検診をこなし、最後にやってきたのが、胃部X線検査である。いわゆる、バリウム検査というやつだ。私は、このバリウムを甘く見ていた。同僚のyummyさんを責めるつもりは全く無い。無いが、去年初めてバリウムを飲んだyummyさんの「さほどひどい味でも無かったし、量もたいしたことなかったよ〜!」という言葉で、完全に高をくくっていた。

まだバリウムを飲んだ事のない同世代のみなさんのために、まずはバリウム検査の手順を紹介しよう(しかし意識がもうろうとして記憶がない部分が45%くらいある)。

部屋に入ると、技師のおじさんが検査の説明をしてくれる。しかし、おじさんが手に持ってシャカシャカとシェイクしているバリウムの「見た目」と量の多さが気になって、頭に入るのは話半分。次に、胃を膨らますために炭酸を飲む。これは、粉末状の炭酸を「粉薬」の要領で喉の奥に落とし、甘く味をつけた少量の紅茶で一気に流し込む。「ゲップが出そうになりますが、我慢して下さい」と注意される。わたくし、炭酸が大好きなうえ、「ゲップ・コントロール」にはかなりの自信を持っているため、問題なし。喉の奥でシュワシュワしている炭酸が、美味しいとさえ感じる。技師のおじさんはコントロールルームに入り、マイクで指示を始める。「それでは左を向いて、バリウムをふたくち飲んでください。」ふたくち・・・微妙、と思いながら飲む。もはや「飲み物」とは言えないマットな感触。なんとか飲み下すも、くちびる、口の中、喉の奥、つまりバリウムが触れたすべての部分が拒否反応を示している。はい、撮影。「では、今度は右を向いて、またふたくち飲んでください。」やばい。さっきの勢いでふたくちは無理だ。「ふたくち飲んでます」という顔をして、さっきよりずいぶん少ない量を飲み下す。気持ち悪い。吐きそう。涙が出る。はい、撮影。「それでは残りのバリウムをぐーっと飲んでください。」ぐーっと、って。飲めるわけないでしょうが。吐き気状態になってしまっているので、ごくごくと飲めるわけもなく、涙を流しながらちびちびと飲む。ちびちび飲むと余計まずい。「ちょっとヤバいな」と気づいてくれたらしく、「もうその辺でいいです」と言われる。ここから先、記憶があいまいだが、たしかこのあたりでもう一度炭酸を飲まされる。美味しい炭酸も、もはやこの気分の悪さを和らげるアイテムにはなり得ない。さてここから、大きな板に「はりつけ」にされた状態で、ぐるんぐるん回される。吐きそう。ゲップは我慢。目が回る。私いま、何してるんだっけ?吐きそう。もうやめて…(涙)。「うつぶせになって、あおむけになって」を何回も何回も何回も何回も何回もやらされる(バリウムが規定量飲めなかったため、たくさん回されたらしい)。検査が終わり、口をゆすぐ。口のまわりににっくきバリウムが付着している。怒りたい。怒りたいが、そんな元気はもう無い。

そして、「バリウムは今日中、遅くとも明日には体外に出しきらないと、大変なことになりますので」と、下剤を渡される。下剤?!
フラフラになった私の身体の細胞のひとつひとつが、広小路通をデモ行進している。「バリウム断固反対!」「我々は、今後のバリウムを断固拒否する!」「健康は自分で守る!」わかった、わかったから。私は君たちの味方だから、ねっ。細胞をなだめすかして、とにかく食べ物を食べなくては。このバリウミーな感じを消すには、気持ち悪くても食べなければ。ふらつく足取りでドトールへ向かい、コーヒーでサンドイッチを流し込む。


確かに私は、ふつうの人より「味」に敏感なのかもしれないし、デリケートすぎると言われても仕方ないかもしれない。だとしても、あんなおぞましいものを飲むのは、私にはどうしても我慢できないのだ。痛いことは我慢できても、あれは無理だ。というか、物理的に来年からは不可能だと思う。口元に持ってきただけで吐き気がするだろうから。今後、胃の調子が悪いと感じたなら自分で病院へ行って胃カメラを飲めばいい。だから来年から、バリウムは絶対にパスすると決めた。そもそも、あんなに身体に負担のかかる検査をして、身体に余計悪いんじゃないだろうか?しかも、すぐ出さないとセメント状態にカチカチになるっていうのは、腸にも悪いんじゃないのか?あれで痔になる人はいないのか?バリウムってなんなんだ?!?!



…あの検査、本当に必要なんでしょうか?私は、「バリウムを作っている会社」と病院が癒着してるせいに違いないと思っています。あれだけ身体が拒否反応を示すなんて、身体によくないに決まってる。少なくとも私の身体には。健康診断でも何でも、「そう決まってるから」と鵜呑みにして言われるがままに動くのではなく、自分の身体の声を聞いたり、感じることを大切にしなければ、いつか恐ろしい目に遭うのではないでしょうか?