四国巡礼 伊予の国編

四国。
一生、訪れることはないだろうと思っていた土地だ。少なくとも、2年前までは。ケーキを作っていたから手がふさがってチャンネルが変えられず、見たくないのに偶然見てしまったドラマ「坂の上の雲」。これを見なければ原作の小説を読むこともなかったし、正岡子規の書いたものを読むこともなかったし、夏目漱石の小説もたぶん読まなかったし、ドラマ「龍馬伝」を見ることもなかったし、小説「竜馬がゆく」を読むこともなかった。ひいては、四国を訪れることもなかっただろう。そういう意味では、司馬遼太郎さんとNHKは、私の人生を変えたといっても過言ではない!ないないない!

というわけで、台風の中、松山ぞなもし。名古屋‐松山間は飛行機で移動できるんじゃが、考察の結果、JRプランの方が今回の旅の動線に合致したけん、JRを利用することにしたんぞね。…話が進まないのでこの辺で伊予弁はやめるぞね。
さて、四国の旅は実際にJRが断然お得なのですが、四国の特急はメッチャ揺れます。岡山から松山への特急「しおかぜ」、私は生まれて初めて「電車で」乗り物酔い。おそらく瀬戸内海を渡る時に、はしゃいで右の窓、左の窓、と動きまくったのが敗因かと。岡山で買ったマスカットとピオーネ、たったこれだけの葡萄が食べられなかった、、、ってけっこう酷い酔い方だよなぁ。

しかし酔っている間もなく松山のスケジュールはブラジル女性のお尻並みにパッツンパツン(偏見)。小説ゆかりの地、ミュージアム松山城などをまわるのに、「一般的な」坂の上の雲ファンであればおそらく3時間もあれば十分なのでしょう。でも小説まで読み込んでいる私たち(そして相方はマニアックな城好きでもある)では、5時間でも全然足りない!足りなーい!事前に作った「旅のしおり」には「何時何分、できたら○○で休憩をする」とか書いてあるけど、悠長に茶など飲んでるヒマは全くございませんでした。だって松山まで来ないと見られないような貴重な資料がたくさんあるんです。それらにいちいちコメントしたり、小説のセリフを引用したりしながら歩くものだから、時間がかかってしょうがない。

まず手始めに松山城ですが、大変美しいお城でした。

城っつーと普段名古屋城しか見てないので、このシックな色合いには心惹かれます。私はまだ日本史初心者(笑)なので、ようやく「そうか、伊予松山藩は幕府側だったっけね〜」という視点から城を見られるようになったレベル。それでも大した成長ですが、「城好き」にとっての城の魅力というのは、私にはまだまだ計り知れなく、きっとものすごく奥深いものなんでしょうね。っていうか、城が好きな人というのは、おしなべて石垣が好きだね!「あーっ、松山城の石垣は野面(のづら)積みじゃないのかぁ!これはあまり好きじゃないな〜!」って、一体なんのこっちゃー!と思ったけれど、たしかに石垣って城全体の景観を左右する重要な要素ですね。そこには、戦略、美的センス、歴史などに関して、語りつくせぬ魅力があるのでしょう。旅を終えた今となっては、この私も「野面積みを知る女」です。ふふふ。のづらづみ!

城からの降下はリフトで。果敢にも、ソフトクリームを食べながら乗りました。

「リフトでソフト」。外国人泣かせのカタカナ表記。明らかにバニラの方が美味しいとわかっていながら、伊予柑ソフトを食べてしまった。子どもの飲み薬みたいな味がする〜。


そして坂の上の雲ミュージアムは、安藤忠雄氏の設計による、かなり斬新(かつ、周囲の景観に溶け込んでる)カッコいい建物です。ドラマ化以前から存在するということで、この小説が元から松山の人たちに愛されているのがひしひしと感じられます。このミュージアムも大変に「萌えポイント」満載で、いちいち立ち止まっては解説を熟読。「秋山真之が寝転んで日本海海戦の作戦を練った部屋」とか、萌え〜(あ、わかんないですよね。すみません。。)。
そういえば私たちが松山に到着した日は、糸瓜忌正岡子規の命日)だったのです。運命としか思えんぜよ(おっと、土佐弁が)。

雨の中、子規堂の埋髪塔には糸瓜が供えられ、彼の愛した鶏頭が静かに燃えるように咲いていて、胸が震えました。50円(いや、クーポン使って40円!)で入れるこの子規堂で、こんなに濃密な時間を過ごさせていただいて、心から感謝。


さて、「坂の上〜」の次は「坊っちゃん」です。

坊っちゃん列車の中で「坊っちゃん」を読む私。
ところで皆様は「坊っちゃん」を読んだことがあるでしょうか?言わずと知れたここ松山と道後温泉を舞台にした夏目漱石の小説ですが、なかなか笑えるので、読んだ事のない方には一度チャレンジしていただきたい。

坊っちゃん、こんな風にかわいらしく偶像化されていますが、小説内では終始キレまくりで、ツッコミどころ満載です。当時はこの小説、相当に斬新だったんだろうなぁと推測されます。道後温泉も、漱石さんが通っただけあって、なかなかいい湯でした!たしか、「千と千尋〜」のモデル温泉だよね?



松山は本当に私の萌え心を満たしてくれた街であるとともに、何というのか、人も佇まいも温かみがあり、ほっとさせられるところでした。アットホームなのに馴れ馴れしすぎず、他所者にも優しい街と言えるかもしれません。学生の頃とかに住んでみたかったな〜 なんてちらっと思ったりしました。ま、学生時代だったら「こんな何もないとこ、いやじゃ!」と思ったに違いないけれど。とにかく、素敵な街でした。旅先で親切にして下さったみなさん、どうもありがとう。松山、大好きになりました!

どちらも断末魔の叫びが聞こえてきそうな、美味しかった海鮮♪