☆ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

とりあえず「堺雅人関連」は読んどかないかんやろ、ということで、「重力ピエロ」以来の伊坂さんの小説です。


とりあえず、「ゴールデンスランバー」というタイトルが、ビートルズの曲名だったのに気づかなかったことがショック。この私が…。そもそも、GOLDEN SLUMBERS が収録されている名盤「アビイ・ロード」をあまり聴きこんでいないのが原因なのですが(初期のアルバムなら各々150回くらいは聴いているとして、アビイ・ロードを通しで聴いたのはおそらく10回もないと思う)、それにしても記憶に残っていない曲名があったとは。そろそろ、後期のアルバムにじっくり耳を傾けてみるのもいい年頃(?)かもな〜とか思っちゃいました。デジタルリマスター版で!


そんなことは置いておいて、小説の方。
【よかったところ】
・逃走劇のハラハラドキドキ。
・各所でツボがシッカリ押さえてある。
・終わり方がなんともほのぼのとしてあたたかい気分になる。

【よくなかったところ】
・長い。「長さを感じさせる」長さだった。
・「それって都合よすぎだろ!」ってところが多い。
・これ読んでて最も興味を引かれた黒幕の正体が最後まで明らかにされなかった。


ものすごく短くまとめると、「やってもないのに、国家を揺るがす暗殺事件の犯人に仕立て上げられた青年が、ひたすら逃げる話」。読み始めてとりあえずググッと心惹かれたのが「青年を犯人に仕立て上げた黒幕の正体」で、半ば、主人公の逃走劇よりも、「黒幕」がどうなるのかの方が気になって読み進めました。なのに…そこには触れられずに終わってしまった。この小説の肝はそこには無い、ってことなのでしょうが、私はそれを楽しみに最後まで読んだのにーーー!って感じで読後感が非常に悪いです。もしかして伊坂幸太郎氏は実世界の黒幕のことを知っていて、それを知らせようとこの小説を書いてたりして、とか色々自分で想像して我慢するしかありません。

また、たくさんの人が、色々な方法で逃げる主人公を助けてくれるのですが、一般的な小説の読者という目線で考えると、「そんなに都合良くいくかよ!」とツッコミを入れたくなる場面が多々。そこはスピリチュアル本を読んでいる気持ちになって「ま、そういう事って起きるよね」と思って読みました。


【よかったところ】に「ツボがおさえてある」と書きましたが、小説の中にちりばめられたキーワードやアイテムが、読む側をとても「親密な気持ち」にさせてくれます。ストーリーや主人公たちに、あたたかく近しい気持ちを抱くことができるのが、この人の書く小説のいいところ、なのかもしれません。



なんとなく、映画の方が面白い予感がするなぁ。