夏休み読書感想文 海辺のカフカ

夏休みの終わりが近づいてきたので、今年も読書感想文を書いてみたいと思います。つーか 夏休みじゃなくても 読む度に書いとけよって感じなんだけど。


海辺のカフカ」を読んで

海辺のカフカ」を読むのはもう何度目だろう。今までは、この小説の「雰囲気」が好きで何度も読んできたが、ただでさえ「結末がよくわからない!」と言われるこの小説、「お前は完璧に理解しているのか?」と問われると、少々つらいものがあったと言わざるを得ない。でも今回は、今までで一番しっくりときた。「読む度にだんだんわかってくる」のではなく、今回突然「しっくりきた!」という感じだ。

この小説には、いくつかの時間軸をベースに、個性的かつ魅力的なキャラクターがたくさん登場する。何度も読むと、そのたびに「わ〜っ○○さん、お久しぶり!」と言いたくなってしまうほど愛すべき登場人物ばかりだが、読み手である自分が変化し成長すれば、その度に「共感できるキャラクター」も変化していくのが面白い。ちなみに今回最も共感できたのは、ヒッチハイクするナカタさんを乗せてくれたトラック運転手のハギタさん(春樹ファンでもその名を知る人は少ないだろう)。

さて肝心の物語だが、多くの人が「よくわからない!」という感想を持つのは、魅力的なエピソードが沢山詰まっていながら「オチがない」「エピソード同士が、つながっていそうで、でもそのつながりがよくわからない」という点が原因と思われる。「海辺のカフカ」は、純粋にラブストーリーでありながら、その本筋とはズレている(ように見える)いくつかの別のストーリーで構成されている。世の中でよく読まれる、「一つの物語を織りなすいくつかの物語が最後にひとつにつながる」的な生易しいものではない。かなり積極的な態度で向き合わないと、いや向き合ったとしても、自分の頭で考えて想像力をフルに働かせないと、ここに書いてあるいくつかの物語をひとつにつなげることはできないだろう。正に、この物語が「関係性と想像力」について書かれている通り、読んでしっくりくるためには「関係性の理解と想像力」が不可欠なのだ。その事を、先に述べたハギタさんが、なかなかわかりやすく教えてくれている。

海辺のカフカに書かれているのは、
「全てのものごとは関連しあっている」
「責任は、想像力の中から始まる」
ってことだ。よく読むと、全てのエピソードにそのテーマが反映されていることに気づく。そして私の中では、これらのテーマは「平和の実現」と密接に結びつくものでもある。この物語は、平和について書かれている。少なくとも、私の理解では。村上春樹氏がノミネートされるべきは、ノーベル文学賞じゃなく、ノーベル平和賞だろう?と思うこと、しきり。


最後に…
海辺のカフカ」の本筋は、ラブストーリーという形をとって進んでゆく。この本を買った時、私はたしか恋をしていたと思う。恋をしている人にはふさわしくない「一人旅」に向かう途中、空港で買ったのだ。(だから上巻だけが長旅のせいでボロボロになっている)
恋をしながら読むのも、悪くない。けど、恋から一歩身を引いて読むと、「海辺のカフカ」は全く別の色を見せてくれる。本質に近づくためには、その中に飛び込むか、あるいは一歩引いて眺めてみるのも、一つの有効な手段かもしれない。



・・・うーん、小説を読んでない人が読んだら、全然わかんない感想文だな、こりゃ。